1965年、彼らの叫びは世界に広がり、その勢いは当時の音楽シーンを席巻していたビートルズやストーンズをも凌駕した。MY
GENERATIONである。
凄まじいまでのキースによるドラム、かき鳴らされるピートのギター、絶妙のソロを披露するジョンのベース、そしてそれらの演奏の中で最も強烈に響くロジャー・ダルトリーのボーカル。全てが圧倒的で、全てが新しかった。
モッズバンドという形容詞はあまりにも陳腐であり、彼らこそパンクの原点であり、ロックンロールの本質であると私は断言する。ロックンロールサーカスでメインのストーンズを完全に主役から追いやった彼らの圧倒的なライブパフォーマンスは彼らが当時世界一のライブバンドであることを世界中に認識させ、その勢いは「トミー」、「フーズネクスト」といったロック史に残る名盤を生み出すに至った。
そんなフーが今回来日するのである。初来日。興奮しないはずが無い。キースとジョンがすでにこの世を去ってしまったにしても、だ。もちろん彼らに当時と同様の激しいパフォーマンスを求めることは酷である。「ライブ・アット・リーズ」に収録されているようなフーらしさはあまり見ることが出来ないかもしれない。ピートも風車奏法からジャンプ、ギターを壊すなんてウッドストック級のアクションは起こさないだろう。それでもいい。フーというロック史に燦然と輝く彼らの演奏を私は見てみたい。
言うまでも無く最高のバンドであり、ロックンロールを体現して見せたピート・タウンゼントは成長こそすれ、退化などするはずがない。ディランやクラプトンがそうであるように、年をとることは単純なパワーの低下ではなく、より深遠な世界への到達を意味する。人間はある時点を境に衰えるのではなく、常に成長しているのである。フーも長い年月の中でそうした変化をもちろん繰り返してきただろう。漫才師に同じネタを何度もやれと言うことがナンセンスであることと同様に、全く同じ演奏をさせることは彼らに求めることではない。
フーという神話を実際この目で見て、聴いて、感じることなしにレコードに収められた過去のフー伝説にすがっているのも悪くはないだろう。神は常に共同の幻想であるべきかもしれない。しかしながら私は神に会いに行く。神は決して俗人の期待を裏切るようなことはしないはずである。ロックの本質に触れることの出来る非常に稀有なこの機会を私は逃すわけにはいかないのである。
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