<アルバム概要>
椎名林檎「勝訴ストリップ」からゆうに2年半ぶりのオリジナルアルバム。相変わらずこの人は何を考えているのか、という感じでございます。全編が1つのストーリーになっているのは当然のこと、その繋がり、世界観はまさに林檎ワールド!多くの部分で歌詞が聞き取れず曲中心のレビューになりそうです(もっと歌詞カード見ておくべきだった…)が、そんなもんなくとも十分に林檎ワールドを体験できる内容になってますからご安心を。しかしただボ〜ッとしたまま聞いていては、ほわわ〜んとした感じのまま終わってしまう魔力も持ち合わせていますから、じっくりとここで抗体を作っておきましょう。ではかいつまんでオススメ曲紹介を。
1 宗教
いきなり林檎教か(笑)あんたが宗教だよ。イントロからオーケストラと怪しげな弦楽器が響き、ノイズと幻惑かかったヴォーカルがはじまります。そしてサビでハードロックになり、林檎様(←洗脳済)の裏声と壮大なオーケストラが響きます。ここでは素直に洗脳された方が無難です。しかし自分はしっかり持つように!
2 ドッペルゲンガー
あのー…ドッペルゲンガーって何ですか?なんかのキャラクターじゃないですよね(笑)[ドッペルゲンガー…朝、霧のたちこめた山で
太陽をバックにして立つと、霧がスクリーンの役目をして
巨大な人影が霧に映る現象です]らしいです。確かに朝やけが何とかと言っていますが、何だこの音楽は。完全に狂っています。乱れ飛びかうベースの中に、単調に吹き続ける笛の音がなんとも(いい意味で)気持ち悪い。
3 迷彩
ドゥゥゥーーン…という鈍いギターから始まり、ジャズ風に全体を染めるやっぱり怪しい、ご存知シング「茎-STEM-」のナンバー。彼女お得意の曲であることは間違いないでしょうが、ギターはぐにゃーと音をたて、バイオリンやドラまで鳴り響きます。しかし不思議に3曲目ともなると、全然不自然さ感じません。まさに宗教。
4 おだいじに
あなたがです(笑)一息ついてピアノのみのメロディーが流れ…と思ったら、後ろでなんか言ってますよ…。でも全体としてはもう一つの椎名様タイプ。静寂に響く彼女の囁きをご堪能アレ。「守るものは守るさ」と。
5 やっつけ仕事
一体どういうコンセプトかわからない…。「おだいじに」から聞こえてた後ろの声が続き、テレビからどこの国の番組かわからない番組がはじまりました。そして紹介される「ヤッツケシゴト」という曲。テレビの前の人物は掃除機をかけはじめました。…というのがイントロ(?)。曲はリズムテンポにオーケストラ。こうやって考えると林檎様も多ジャンルアーティストかも。最終的には「ねえ好きってなんだっけ」状態に陥る様ですが。ちなみにこの曲、「絶頂集」にも収録されているようです。
6 茎
「茎-STEM-」のアルバムヴァージョン。シングルでは全編英語詞でしたが、それを訳してアルバムに登場。もちろん大幅にリミックスも施され、オーケストラ一色だったシングルヴァージョンと比べ、また違う方向に仕上がりました。琴や三味線の音のようなものも聞かれ、日本風になったと言えるのかもしれません。一度聞き比べてください。
7 とりこし苦労
「ええーいままよ」という、普段マンガでしか聞かれないような鮮烈な歌詞からスタート。はじめはリズムはしっかりしながらも♪ブンブンという鼻唄だけというもの。しかし後半から1転2転し、童謡の世界かと思いきや、さっさと次の曲へ。本当にどこで切り替わったのかわかりませぬ。それこそとりこし苦労です。
8 おこのみで
前曲からどこで受け継いだのかわからない。てかこのアルバム自体、大きく言えば一曲です。途中で途切れず最後まで逝ってしまいますから。さてこの曲は、全体にわたり林檎様お得意のダラーッとしたメッセージ性の強いミディアムテンポ曲。「愛と言う言葉は不要です」「お好きなように…」とは彼女にとって珍しい歌詞かもしれません。
9 意識
もう飛んでます、1曲目「宗教」から。てかまた何だこれは。一体何の実験をなさっていらっしゃるのですか、という感じのイントロから一気にリズムロックへ。♪ポッポーという効果音が頭に残りましたな。今までと比べると意外と落ち着いた雰囲気のあるこの曲…ですが、この人に単調という音符はないようですね…。間奏はやっぱ意味不明鍋たたきサウンド。でもこれおすすめよ。「茎-STEM-」ヴァージョンと比べてもいいかも。
10 ポルターガイスト
踏み切りの音(カンカンカンカン)がだんだんリズムに変わり(ありえない!)、そしてメリーゴーラウンドのようなお人形さんミュージックに。どこに迷い込んだのか気味悪く、絶対そこら辺のものポルターガイストしてますわ。これぞ3拍子の力であります。「僕には美しく見えます」という歌詞に納得。
11 葬列
なんで最後にこうなるのっ!灼熱の音楽の中に漂う林檎様の声。バイオリン大好きで、やっぱ単調と言う文字はこの人の中にはなかった…。民俗音楽の融合〜林檎MIX〜といった感じで、最後にとどめ、本当に洗脳されてしまいそうです。それはどんどんエスカレートして、最後には壮大なパイプオルガンと輪廻の世界。訳のわからぬまま、とりあえず聴いてくださいアハアハ(←洗脳済
<編集後記>
本当によくわからない。けど音楽はしっかりしてて誰でも馴染める(いや洗脳されるのか? 普通の音楽とは違う不思議な世界観、それに伴う巧みなインストと林檎様の声は、これまでの2枚のフルアルバムとも確実に1線を介している。まずこの落ち着いたティーカップのジャケットからは想像に苦い。彼女は我々の期待をはるかに越え、自分自身の世界で暴れまわった。ここでおもしろいのは、この琴線に感じる音楽に僕らがついていけるということだ。つまり慣れていない音ではなく、慣れている音楽のなれの果てなのであろうことが推測できる。わけがわからないと感じることはあろうとも、これはダメだ聞いてられないと感じる人は、ここいらの音楽をそこそこ聞いている人からすれば少数派だろう。それだけ彼女の音楽経験は意外とまっとう(!?)なものだったのかもしれない。
〜written by 音楽ライターどらごん 〜
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