RANCID「...AND OUT COME THE WOLVES」アルバムレビュー


“やりたいことをやる” 簡単そうな一句だが、なかなかこれが難しい。やりたい事をやれる人、及びやっている人はこの世に何人いるのであろうか。やりたいことをやっている者…それは、やりたいことをやっているだけに常に負けられないというプレッシャーと闘い続けなければならない存在であるような気がする。

『こんなのは自分じゃない、らしくない、やりたいことをやってみたい、デモデキナイ』と現在の自分が置かれている状況を落胆視しながら毎日を送っている者の方が世の中圧倒的に多いだろう。

でもそれは“やりたいことをやっている”人の輝いている部分だけを見てそれらに惹かれながらも、それまでに“やりたいことをやってきた”人達の影の部分を知らない。太陽は常に輝いているわけじゃない。人々の目に触れない漆黒の闇の時間帯だってあるはずなのに…。

彼らRANCIDのメンバーの容姿を人々が見たときに思うであろうひとつの印象。それは『あんな歳にもなって、あの格好。きっとあの人達は好きなことをやっていれてるのだろうな。』そんなところだろう。彼らが通り過ぎて来た、決して裕福とはいえない家庭環境や、成功をしたくないという理由で解散をしたという前バンドからRANCIDを結成するまでにTIM(Vo,G)が経験したアル中のホームレスという姿や、あてどもない生活を送っていた過去を想像するには至らないだろう。

 “心から望んでいないことをやってきた”過去や、“やりたいことをやってきた”が為にしてしまった経験という材料をうまく配合させて、これらを溶解炉で溶かし込み凝固させて完成しさせた、彼らがなお思う“やりたいことをやった”からこそできた結果。

それがこの3rd Albumというニューマテリアル。彼らが送ってきたあてどもなく送ってきた日常や、前作、前々作という、その時に抱いた“やりたいことをやった”過去を一蹴し、今まで以上に彼らの輝きを増させた作品であるように感じる。あぁ、こういうパンクがあってもいいんだなと納得させられた。

「やる気なら、さっさと行動をおこすがいい。精神的苦痛に耐えられるかどうかの問題。昔から言われてる通り、いい人生を送るカギはやめる時を知ること」…これは4曲目に収録されている『TIME BOMB』からの抜粋である。彼らは後に4th、5thと作品を発表することになるが、この時すでにカギを見つけていてのだろうか。彼らは“やりたいことをやり”ながら人生を謳歌し、進み続ける。

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