私は今でもあの一瞬の間に心に受けた衝撃を鮮明に思い出す事が出来る。6年前のある日、小学校低学年の頃からすでに、いわゆる、JーPOPというジャンルの音楽に心を奪われ、学校で習う それには見向きもしなくなっていた私は、いつものように某CDランキング番組のリピート放送を見ていた。
50位から41位と、見なれたミュージックヴィデオが流れる。が、しかし20位くらいだっただろうか、私はあるミュージックヴィデオを前に卒倒しそうになった。...煌びやかなドレスに身を包み、メンバーのほとんどが顔に白塗りを施した中世ヨーロッパを思わせる謎の集団、マリスミゼル。そうこれが私とガクトの運命的、衝撃的とも言える出逢いだった。小学校6年、冬の寒い日の出来事である。
幼かったそれまでの私は、ただテレビから与えられるヒット曲のみが日本のミュージックシーンを作り上げる全てと思い込んでいた。けれども音楽という表現方法以外に自らを着飾る事で、ヴィジュアル面でもリスナーに刺激を与える術を持つマリスミゼルを知ってからと言うもの、私は彼らの構築する音楽と美術が融合した美しくも妖しい世界にどんどん引き込まれていった。
中でも私はヴォーカリストであり、全ての作詞を手掛けるガクトが大好きだった。低音で心の奥深くまで響き渡る歌声はもちろんのこと、男性であるのに「美しい」と違和感なく形容されるその中性的な容姿も心惹かれる理由の一つだった。
当時はまだ中学生になったばかりだった為、ライブに行く事は親からも反対されていたし、私自身、 彼らの世界を肌で感じ、それを理解するには早すぎると漠然とだけれど、そう感じていた。彼らの世界をずっとCDや雑誌、いずれはライブで触れられるものだと信じて疑わなかった。しかし、事務所とのトラブルやメンバー四人とガクトとの方向性の相違などの様々な理由により、ガクトはマリスミゼルから脱退した。
それを知った時、もう二度と五人が創り出す音楽を聴けないのだと自分に言い聞かせなければならない事が何よりも辛かった。マリスの世界をあらゆるメディアを通して感じる事が生活の一部となっていたので、 その部分だけポッカリ穴が空いてしまったかのようだった。私はこの穴を埋めたかった。その為に私がした事、それは、「ガクトを信じ、待つこと」だった。
そして2003年現在、ガクトがマリスミゼルから離れ活動して4年もの月日が経つ。今や彼を知らない若者などいないのではないかと思われるほど、様々なフィールドで彼は活躍の場を広げ続けている。私は彼の事を話す時、「ソロ活動」という言葉は使わないようにしている。なぜなら彼自身が「ソロ」であるという区切り的な意識を持っていないからだ。...自分を待ってくれている人の為に、音楽という形で答えられればそれで良いという、男らしく、潔い彼の作品に対するスタンスにはいつも感動させられる。
そうして出来上がった作品には、彼の魂そのものが注ぎ込まれているのではないかと感じてしまう。そしてそれは多くの人々を熱く、切なく、悲しく、時に言葉では表せない感情を起こさせる計り知れない程のパワーを持っているのだ。
生きていく上で確かなものなどなかなかないけれど、これだけは決して揺るがないと言える。「私はこれからも唯一無二の最高のアーティスト、ガクトに魅了され続けてしまうだろう」と。
〜written by 音楽ライター月子 〜 ・原稿依頼は→メール(月子)
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