恥ずかしながら、僕はついこの間まで「aiko」というアーティストを何か誤解しているようだった。彼女の曲を好きではあったが、彼女は、彼女自信の愛嬌のあるキャラクターと、メディアの力によってヒットを飛ばしているのだと思っていた。何を考えてたんだ?俺は……。ほんとに恥ずかしい限りである。
もしかしたら、そう考えている人がもしかしたらまだいるかもしれない。そんな人は、彼女の一つ一つの曲をよ〜く聞いて欲しいとおもう。すぐに彼女がただ者ではないことが分かるはずだ。
まず、彼女の曲を細かく見ていく場合にはメロティと歌詞を完全に別にして考えていくべきだろう。
これはあくまでも僕自分が感じたストーリーであるが、彼女の歌詞には一曲の中にながれがあるように思われる。例えば、4thアルバム「秋そばにいるよ」の中の1曲目の‘マント’の歌詞「ねぇいつまで縛ってる?やばい 息も少し吸いにくい…」のようなで出しで、目標を見失って戸惑っている少女の心情をあらわしているような少し重い雰囲気で入るのだがサビで「見上げた空を黄色く塗って あるはずないものを創り出せばいい傘をマントに綿毛の様にあたしはゆらゆら舞い落ちる」といっていて、ここで少女が自分の目標に向かう思いを再確認する、といったような一連の流れを感じることができる。どの曲もそうである。
しかも、彼女の曲の中には意外にもネガティブだったり、悲(哀)しみだったりするどこかずしんと重くかんじる表現が多数使われている。彼女の詩のストーリーはかなり重い。かなしみからの「生」についての自問自答が非常に多い。詩だけよんでたらすこし疲れそうだ。
しかし、それでも彼女の曲を聞いていると、聞くことに抵抗を感じるどころか身体に爽快な風が吹き抜けるようなさわやかな感じがする。なぜだろう。言うまでもなく彼女の生み出す曲の音符一つ一つが意志を持っているかのようにホントに生き生きしていてとても前向きだからである。彼女の「伝えたい、聞かせたい」という気持ちだけを楽譜にしているから、素直な心地よいメロディが生まれるのだろう。
歌詞とメロディをわけて考えた方がよいと言ったのはここにある。そう、このギャップである。この二つの間の狭間に言葉では説明しようのない「妖しさ」が生まれている。人々はその「妖しさ」に無意識のうちに惹かれている。それが無意識だから、なぜ自分はaikoがよいと感じるのか分からなくなり以前の僕のような錯覚を起こしてしまうのだろう。
よく考えてみると、aikoは地味な歌手である。今、女性アーティストで完全に自分の地位を築き上げたのは皆さんもわかるように宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、MISIA、aiko、倉木麻衣くらいであろう。こうみると、やはりaikoはこの中ではどうしても芸に欠ける部分があるのは否定できない。しかし、aikoはそれをものともせず、自分の信じた道だけを今もなお突っ走っている。その結果としてこのそうそうたるメンバーの中に堂々と名を連ねているのだ。
4月には「蝶々結び」をリリースした。蝶々結び、雨の日、帽子と水着と水平線の三曲を収録している。上で述べたようなことを少し頭に置いてこのシングル聞いてもらいたい。aikoというものがだんだんはっきり見えてくるだろう。しかし未だに、歌詞やメロディの奥の奥に隠れている「aiko」のホントの姿はいくら聞けどもあらわになってはこない。いやぁ、やはり彼女はただものではない。(終)
〜written by 音楽ライター光志 〜
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