相手が知らないミュージシャンを紹介する時とかによく使う“何っぽい?“という言葉。これの答えにつまるバンドの一つにGO!GO!7188がある。よく言われるのは「ミスチルっぽい」とか「スピッツっぽい」などなど。では「GO!GO!7188は何っぽいのか?」答えはまだない。こういう質問の場合既に存在していて有名なアーティストを参考にするわけだから、きっとこれからも答えは見つからないにちがいない。
GO!GO!は人が踏みいれていない未開地を開拓した。まだ誰もふんずけていない真っ白な雪原に一人独占して足跡をつけた。これまでのガールズバンドはどこかしらに可愛らしさをもちあわせていたが、その愛らしさよりも男前度の方が圧倒的に強いのだ。ではGO!GO!7188はどんなジャンルなのか。
正直、それもまたよく分からない。だぶんロック。またはパンク。もしかしたらオルタナ。やっぱりガレージかも。思考は尽きないのでこの辺でおしまいにするが、聞き手によってだいぶイメージが違うと思う。私の見解ではガレージロック。
そして重要なのがGO!GO!7188は彼女達にしか出せないエキゾチックなアジアの香りがするということなのだ。エキゾチックという言葉は主にアジア圏を指す言葉として用いている。欧米人が日本に来て発する言葉の10位以内にランクインしているだろうこの言葉をGO!GO!から感じるのは私だけだろうか?よくアジアの古着とか雑貨屋にはタイとかインドから買い寄せてきた御香の匂いがする。
いかにもアジアな香り。かなり妖しくて紫と金のへんな刺繍が施されたベールがあるような空気だ。そんな空気をGO!GO!7188は音から生み出している。それは癖のある強いボーカルからなのか、独特なのにメロディアスな一面を持つグルーヴなのか。とにかく耳に残る音像は、聞き手に強烈なインパクトを与える。
GO!GO!をあまり知らない人でも知っている”こいのうた“とか”浮舟“はGO!GO!の「本質」を貫いた楽曲ではない。これぞGO!GO!という曲は”パンク“とか”ロック“などのおもいっきり針の振れまくった楽曲達なのだ。そんな自分達の実質的な曲を今までシングルとしてなぜ放ってこなかったのか?ずっと疑問に思っていた。
しかしこの”青い亀裂”はどうだろうか?GO!GO!の血となり肉となり骨となっている根本的なロックが前面に出ているじゃないか。しかもその衝動は静かに始まる。「悲しみは何故こんなにアタシを魅了してやまない」印象的なフレーズを含んだ静寂こそ、その後にやってくるダイナミズムを鮮やかに演出し、より針の振りを大きくさせる。
そしてちゃんとこの曲からもエキゾチックな香りがする。一年と八ヶ月という長い月日を経て世に放たれたニューアルバム『竜舌蘭』はGO!GO!7188らしいどこまでも加速するスピード狂ガレージロックだ。でも明らかに今までとは何かが違った。ゆうとあっこ、二人のフロントマンのソロ活動というGO!GO!の以前の個人での挑戦によってギターベース一つ一つがよりソリッドに鳴り響いている。しかしそういう技術的なことよりももっと変わったものがある。
そう、空気だ。前の方で散々エキゾチックガレージロックと言い続けてきたが今回の『竜舌蘭』には「女」というものが堪らなく魅力的に、時には妖しく濃密に漂っている。GO!GO!が放っているエキゾチックな香りはよりドぎつく、より官能的になった。女性が持ち合わせる様々な表情の断片を沢山描いたアッコ。
相手を誘い込むような、今にも泣き出しそうな、世間を冷ややかな目で嘲笑しているような、鋭い睨みを効かせているような、ユウの声。
今までのGO!GO!は結構男勝りな曲が多かった。でも今回は計算高くて、ズルがしこくて、愛されたくて、かわいくて、ダマされダマしあう女性がアルバムの中に存在している。こんなふうに新しいGO!GO!7188が生まれたのはほかでもないドラムスのターキーがいるからである。
彼が柱としてドーンと後ろで構えているから二人のフロントが好き放題暴れることができて、その暴れから新しいGO!GO!7188の音楽が生まれてくるのだ。M3の"バイオレット"。「そして捨てるものを間違った だからできるだけ君と歩幅を合わせてみることにしたんだ」あきらめの中で見出したこと、妥協か実験かようやく視野が広がって今の自分を第三者的に見ることができた。
でもそこから見えるものは描いていたものとはだいぶ違うもので、「あーあー、どうしよーかなー」っていう気分をGO!GO!7188は混沌とした彷徨いから最終的にはポップに鳴らしている。次にM5の"千日紅"。これはかなり面白い。GO!GO!7188というバンドはこれまでも面白い楽曲を多々創ってきた。
“ジェットニンジン”、“とかげ三号”、“めみみはなくち”どれも歌詞が面白い。その部類に入るであろうこの曲はこれらの中でもダントツに大人っぽい。いや大人っぽいというより大人なのだ。これまでの面白い楽曲たちはどこか幼く、少女のようだった。「ねえ聞いてよ 赤いボンボン」このフレーズがミディアムテンポで繰り返さそして気になる“くのいち”。
平仮名のくと、カタカナのノと、漢字の一で女になるように沢山の交錯が絡み合ったオンナが見えてくるこの曲のイメージは一言で言うと「大奥」だ。あのドロドロとした雰囲気にぴったりである。ドラマを見た後にこのくのいちが流れて来たらんていいんだと勝手にタイアップを考えてしまう。ドラマを見逃した方はGO!GO!7188の”くのいち”をきけばあの独特の空気が味わえること間違いなしだ。そのくらいの個性を放って存在している。そしてラスト2の曲"考えごと"は、ユウとアッコのソロ活動の集大成ではないだろうかと思わせる楽曲だ。
フロントの2人が個々にソロのシンガーとしてどれだけ極められたか。どれだけ自分の声の生かし方を知りえたか。その答えがこの曲だ。アッコから始まるボーカルはフラットで切れのよさを持ち、その後に続くユウのボーカルはボーカリストとしてのゆるぎない存在感を明らかにした。しかし、あくまでも彼女たちはバンド内でのユウ・アッコとして歌い上げた。自己表現の最適速度を見出したのである。GO!GO!が隠し秘めているであろう数ある手の内の新しい一手がこの"考えごと"だ。
その新たな一手はこのアルバムの必殺の王手となり全体を色染めている。いきなりだが、人間という生き物が無常な生物であるからには、バンドというものも常に変化をし、良くも悪くも移り変わってゆくものであろう。GO!GO!7188というバンドは前回のアルバムから、多くの模索と格闘しここに至っている。
それを経て彼女たちが出した答えがこの『竜舌蘭』。新たに歩みだした方向を私はすごく面白さを感じながら見ていきたい。3人がいるべき場所で持ち合わせた音を鳴らすとき、それは単なる個々の寄せ集めた音の集合体ではなく、GO!GO!7188にしか鳴らすことのできない崖の端スレスレを歩くようなスリリングなロックが響き渡る。適材適所という言葉がそれ以上の意味を含むようになりつつあるこのバンドは、さらなるアナーキーな音の戦場へと行くための加速を続けていく。
〜written by 音楽ライターキムラトモミ 〜
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