アルバート・アイラー アーティストレビュー


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コルトレーンやバード、マイルスについて、その道に暗い人に半分悦に浸って語りーの曲を聴かせたりしているとき、僕はまるで心から愛してる人がいながらも、身近な「決して嫌いではない」人間に抱かれてるような、なんだか物悲しい、阿木耀子な気分になったりするのです。

どういうことかというと、本当にフェイバリットなジャズプレーヤーは別にいて、その人について語ったり喧伝しまくったりホントはしたいのですが、当の対象が前出の「巨人たち」に比べるとかなりマイナーであるというか玄人好みであるというかつまり一般的ではないのです。そこを踏み越えてフェチに自分の守備範囲について熱く語れるのが俗にいうオタク連中なのではないでしょうか。僕はその壁の前でうろうろと躊躇している真っ当人でありますので、よほどのことがない限りアルバート・アイラー(あ、言ってしまった!)について人前で話したりすることはないです。

アイラーという人はそうとうなジャズマニアの間でも評価が分かれる謎のテナーです(サックスにはテナー、アルト、ソプラノとある)。一般的に聴いていて心地いい、リズミカルなジャズのイメージと彼のそれはあまりにかけ離れています。

浅くて広いコンピアルバムなんかに、まず彼が名を連ねることはないですね。耳になじみやすい、チンパンアレー的な展開なんて最初のひと吹きから期待してはいけないのです。「ハードコア・ジャズ」――例えて言うなら、ノート一杯が黒くなるまで書き殴られたボールペンのような音楽をこの人は最初から最後まで貫いた人なんです。

ベースは一応、彼が少年時代にかじっていた「マーチ奏法」なのですが、ここに執拗にこだわってる時点で、ジャズファンの半分には白眼視されてしまってるといってもいいでしょう。とにかく「俺、俺、俺」の世界。山田かまち少年の遺されたスケッチを見たような、「すごいけど、憧れたくはない」世界です。だいたい音色は想像いただけるでしょう。だから人に勧めたりはあまりできません。でも好きなんです。どういう風に好きかはあまり言語化しないほうがいいと思うし、ジャケットの解説文なんかのフレーズに洗脳されて、「ああ、僕の言いたかったことはこれだ!」なんて勘違いはしたくないですから、波長が合う、というところに留めておきましょう。

何かで前に実験をやっていたのを見たのですが、猫は高音の「ミ」のフラットに反応してしまうらしいのです。猫にとっての「ミ」が、僕のアイラーなんです。琴線に触れるのです!

生涯は実に多くの謎に包まれていました。難解で先鋭的なスタイルのため、とうとう最後までメインストリュームとなることはなく、生活のためギャングの「仕事人」としてかなり危ない橋を渡らされたという話です。死に方も実に奇妙で、行方不明の後、川で腐乱死体となって発見されたのです。サックス奏者が「口封じ」のために殺されたなんて実に皮肉な話。

彼が私淑していたコルトレーンは、彼が死ぬ数年前に亡くなっており、その死に捧げた『ゴースト』という曲があるのですが、僕はこの曲を聴くたびに、アイラーは自らの葬送曲を奏でていたのだとしか思えないのです。タータータータラターララー タタータラタ−タラター……。

〜written by 音楽ライター三上圭介
執筆依頼に関して


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