◆「THE DAY 〜LAST APPEARANCE〜 /
尾崎豊」解説 〜
このビデオ・・・それは尾崎の人生において、「最後」のライブをおさめたものなんです。場所は尾崎のホームグランドとでも言える代々木オリンピックプール・・・まさに最後のライブにふさわしい場所とも言えますね。
この1991年10月30日のライブの後、翌年1992年にアルバム「放熱への証」レコーディング終了後の4月25日午後12時6分、
肺水腫のために死亡したのですから。4月30日の4万人以上のファンが雨の中集まって泣き叫ぶ中文京区護国寺での追悼式にオレは行けなかったのだが、尾崎への思いを手記として今ここに残します。
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尾崎豊・・・彼は今もオレの心の中で生き続けている!
尾崎豊、彼は今もオレの心の中で生きている。そう、確かに生き続けているんだ。あの日出逢って以来ずっと・・・今でもずっとオレの心の中で息づいている。
当時オレは高校生、思春期真只中のちょっとトンガッタ少年。進むべき道も見つけられず、やり場のない気持ちを持て余していた。社会が決めたレールにも疑問を持ち始め、時の過ぎゆくままに生きていた・・・。そんな頃、FMレディオから流れてきた尾崎のセブンティーンズ・マップ!! その瞬間一瞬で体が凍りついた。まるで血が逆流したように鳥肌が立った。尾崎の歌はもう、言葉では言い表せないくらい衝撃的の一言だったことを覚えている。
“尾崎はオレのために歌ってくれている”
1984年。それからだね、尾崎を聴き始めたのは。「十七歳の地図」「回帰線」「壊れた扉から」の3枚は、ちょうど自分の多感な高校時代と完全にシンクロしていたので、リアルタイムで聴いてかなり大きな影響を受けたよ。これははっきりと言える。ホント共感した。そしてオレの中で、何かが壊れ、何かが変わり始め、何かが心の中で生まれたんだ。
尾崎と出逢うまでは夢はおぼろだった・・・いや何も見えてはいなかったかな、それまでは。退屈な日常だけでは、いつまでも満たされることができなかったよ。だってやつらが持っているとても小さな物差しでは、今を生きるオレ達のことなんて計れるはずがないんだからさ。溢れる自由の意味さえ気付かず、年老いてゆくのは耐えきれないから・・・。
「そう、思わないかい!?」
尾崎の歌が今でも多くの人に愛され続けるのは、時代が変わっても人間の一番大切な部分は何も変わらないからだと思うんだ。夢、愛、自由、真実・・・これらはいつの時代も不変のテーマだと思う。でも答えはひとつしかないんだ。だから尾崎の歌は、いまだに多くの人を感動させるのだと思うよね。
“尾崎はオレたちのために歌ってくれている”
尾崎の葬儀の日、オレは都内某所ののバイト先で働いていた。それは護国寺の葬儀場から目と鼻の先だったよ。ちょうど22,3才の頃だったかな。まだバンドも駆け出しの頃だったから、音楽だけではもちろん食って行けなかったからさ。シャベル握りしめて夢を掘りあてようと、ガムシャラに頑張っていた頃だよ。
でもこんな日々から早く逃げ出したかった。
黒い汗が染み付いたシャツに願ったよ、もう少しましな明日を見せてくれよと・・・
このまま諦めれば楽になる、心を閉じればいいだけのことだから・・・。でもそれができなかったんだよね。諦めれば夢は過去になるけれど、捨てなければ終わらない未来になるんだからさ。そしてそれは全部、尾崎に教えられたことなのかもしれない。いや、教えられたというより、気付かされたのだと思う。走り続けなければいけないということを!
“そう、僕が僕であるために、オレがオレであり続けるために・・・”
尾崎が天に登った日、汗と埃まみれの体で涙を堪えていた。無性に哀しくなった。無性に虚しくもなった。一秒一秒深刻に刻まれる毎日に、息苦しさを覚えていた真只中の出来事だったから・・・。
でも尾崎はオレのこの心の中では死んじゃいなかったよ。もちろん今でもまだ、オレの心の奥底で歌を叫び続けてくれている。ほら、熱いシャウトが聴こえてくるぜ!
そしてこれはオレだけじゃなく、尾崎と出逢ったみんなの心の中でもそうだと思うんだ。歌い続けてくれていると思う。そしてこの先も時代を超えて、人々の魂を震わせると思うよ、絶対。それほど彼の歌は心に来るものがあるよ。
“尾崎はオレたちのために、この先もずっと歌い続けている”
そしてオレは大人になった。少年の心を今でも強く握りしめながら。遠い昔の時間は硝子細工みたいにはかないけれど、尾崎と出逢って何かが変わり始めたこの胸の思い・・・その忘れない思いは今もまだ、まぶたの奥で熱く燃えている。
この胸の全てを熱くする「素敵な何か」を探し求めながらここまで生きてきたんだ。道が無いのなら、イバラに逆らい進み、足をすくわれるのを恐れずに行けばいいだけのことさ。オレは今もまだ彷徨いながら、夢が咲く丘を探している。まだ見たことのない景色をこの瞳で見るまで・・・。
君よ、夢を待ちきれないで走り出す青春のシプシー達よ、出口のない迷路に迷い込んでも振り向かないで走れ。いつか真実が膝を抱えた君を連れて行くはずだから・・・。
“そしてオレは尾崎のいない今、君たちのために書き続けようと思う”
「夢という名の死語を守りながら」
心の振動をあなたへ・・・「キッズキッズ」
君にも感じてもらいたい。
by Taiki Mori
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人生って何? 夢って何? 人はいったい何のために生きているの? 全ての青春の迷い人たちへ送る新感覚短編集「キッズキッズ」、もう震え出すココロを止めることはできない・・・
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はい、いかがでしたでしょうか? 最後宣伝ぽくなりましたがご容赦ください。このようにオレにとっての尾崎は、凄く人生に影響を与えてくれた人物なんです。彼の数々の歌、そしてメッセージは、本当にどれもロックしています。本当に大切なものを気付かせるきっかけを与えてもらいました。
この最後のコンサートで25歳の尾崎が歌う「十七歳の地図」「卒業」「15の夜」という名曲の数々は、正直色褪せてはいます。でもそれは仕方ないでしょう。尾崎自身が二十代半ばになり、これら数々の十代の時に作った歌達はリアリティーを失っていますから。尾崎が若者の代弁者としてあんなに支持されたのは、彼の歌に等身大の「リアリティー」があったからですから。
しかしですね、時は経ってもやはり尾崎は尾崎なんですよ。25歳なら25歳なりの「十七歳の地図」を力一杯歌ってくれているのです。見物ですよ、これは。また復帰後発表した「太陽の破片」などは、いまだにそのリアリティーを失ってはいません。葛藤と苦悩の中で作られた二十代の歌達は、初期の頃の曲とはまた違った魅力を発しています。最終ライブとして伝説となったこのステージ、見て損はないと思いますね。
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