◆「カラス 〜LIVE from
'90〜'91「JEEP」TOUR / 長渕剛」解説
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いや〜イイネ〜、長渕は。オレみたいな田舎もんが『東京のバカ野郎』へ一旗上げようと夢抱き出ていったあの頃を思い出すよ。「いつかの少年」・・・イイネ〜、「とんぼ」・・・イイネ〜、「STAY
DREAM」・・・イイネ〜、全曲心に染みてイイネ〜(笑) アウトサイダーの必需品、はぐれ者達の必聴曲、チンピラ・フォークの金字塔(笑) 今夜日本酒飲みながら、長渕ライブビデオで男一人泣いてくれ!! そしてまた明日から思うようにならない人生っちゅうやつと闘っていこうぜ!! オレ達は夢を叶えるために生まれてきたんだからさ。。。
〜以下ビデオにインクルードされているインナーよりお届け〜
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けたくそ悪い事が多い。
腹も立つが、ケンカもできず、八つ当たりもできない情け無さ。
「いい人ね。」と言われたくて振る舞っていたら「いい気になって」と言われ、それでも逃げたくても逃げられないしがらみや人間関係の中で生きるしかない。だったら、どうやって生きてやるか、が問題だ。
何を求めるのか、どこへ行くのか、が問題なのだ。
前もって断っておくが、他人の事なんて手に取るようにわかるもんじゃない。わかるもんじゃないが、感じてしまう事はある。
ボクは長渕剛に感じた。
この人はいかれているほど本気に正直にやりたがっている、と。
ある時、長渕剛は言った。
「俺なんかのやってる事は常に今で、さ・・・。」
今とは瞬間であると同時に過去を背負い明日に託す事だ。
「だから、余力があるって許せねぇ。」
今の年齢、今の生活、今の肉体、今の心、今の活力を灰になるまで燃やすとき長渕剛は本望だというのだろう。
「思うわけ、大いに短命であるべきだって。」
そんな長渕剛が今、ビデオの中にいる。
このライブ・ビデオはほとんどハンディー・カメラ(8〜10台)
でシューティングされている。それは長渕剛とカメラの格闘のようでもある。カメラも高揚している。
デモ隊の中から撮ればカメラは反体制になり、機動隊の中から報道すればカメラは当局側に立つ。つまり、視点に中立などなく、あるのは冷やかか熱いかだ。
だったら、煽られ、高ぶり、熱いのがいい。
「ニュース・ソースみたいな絵が欲しかった。カメラが事件現場にずかずか土足で入ってくような映像が。」
そのカメラの肉迫は激しい。長渕剛の高ぶりや激情を浴びてしまったからだ。そして、激しさは時として暴力的ですらある。そんな包み隠さない姿がここにある。
短くとも激しく、すねずに正直に本音を唄いたい長渕剛が見えるはずだ。そして、余力を残さず大いに短命であってよしとするがゆえの頑なさが見える。それがロック・スピリットだ。
本気をテレ隠す人にも、このスピリットが見えるはずである。安らげる寝ぐらを求める人には余計に、だ。
「あえて "俺達"
と言うなら、俺達はカラスなんだ。寝ぐらを捜して飛び回るカラスさ。」
だから、誰もが思っている。
どこまで流れていくのだろうか?
そして、誰もが迷っている。
本当の豊かさとは?
だから、誰もが気にしている。
どうなっちまうんだろうか?
でも、大きな流れは止められない。人の都合では風向きは変わらない。
だったら、どう生きてやるかの肝っ玉で決まる。そりゃあ、少しは金も欲しいし、楽もしてみたい。でも、嘘つきは御免だ。矛盾や誘惑は大きいが、誰にも恥じない命でありたい。
僕は、長渕剛のライブでの激情の向こうにその恥じない命を見た一人だ。
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