◆「THE BARN TOUR 〜'98-LIVE IN
OSAKA / 佐野元春 and THE HOBO KING BAND」解説
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●ビデオインナーより
ステージには佐野元春とザ・ホーボー・キング・バンドのほかに、ふたりのミュージシャンがいた。"ザ・バーン・ツアー"の大阪3日間。このツアーの最後の夜だった。
佐野は、ウッドストック録音のアルバム『THE
BARN』に協力してくれたジョン・サイモトとガース・ハドソン(ザ・バンド)を、ツアーの最終公演地に招いた。コンサートがはじまって1時間ほどたったころ、佐野の紹介でまず阪神タイガースの帽子をかぶったサイモンが登場。彼は会場を埋め尽くした観客に片言の大阪弁であいさつして歓声を浴びたあと、ザ・ホーボー・キング・バンドをバックに、佐野と共作による美しい曲「So
Goes The Song(Love
Planets)」(サイモンの新作『ホーム』に収められている)を披露した。つづいて、もうひとりのゲストであるガーズ・ハドソンが姿を見せ、「7日じゃたりない」がはじまる。彼はKYONのアコーディオンを借り、われわれがザ・バンドのレコードをとおして親しんできたあの品位とスリルを併せ持った強烈な演奏を、こともなげに繰りひろげた。ハドソンがキーボードで長い即興演奏を聴かせたあと、曲はそのまま「ロックンロール・ハート」につづいていった。
ザ・ホーボー・キング・バンドは、相互の音楽的信頼関係を実証するような見事なステージを繰りひろげた。3時間に及ぶこの夜のコンサートは、おそらくこのツアーでもっとも充実したもののひとつだったことだろう。良質で刺激的な『THE
BARN』は、ヒット・チャートの上位でよく見かける金色に塗られたレンガのようなアルバムとはちがう。このツアーで佐野は、自分たちがいかにロックしてみせることができるかを、そして「ロック」とは何かをあらためて示したのだ。
いくら賛辞のことばを費やしてもそのすばらしさを表すのには足りないほどのザ・バンドの最初の2作のプロデューサーと、そのザ・バンドのメンバーが、佐野元春&ザ・ホーボー・キング・バンドと同じステージに立った・・・この"歴史的な出来事"を、ことさら大げさに考えるべきではないのかもしれない。アルバムを一緒に作った日米のミュージシャンが、大阪でひと晩だけ共演したにすぎないのだ。
とはいえ、これまでこうした「音楽的交流」が日本のロックの歴史のなかでどれだけ行われてきたかというと、その数は決して多くはない、。日米のすぐれたミュージシャンたちのライヴ・セッションという"当たり前の出来事"がこの夜のように"当たり前"に行われるようになるのに、考えてみればずいぶん時間がかかったものだという気もする。
彼らは、ミュージシャンとしての交流を通じて、充実したアルバム『THE
BARN』を作り上げ、大阪のコンサートでそのミュージシャンシップを垣間見せた。ここにはその感動的な光景が記録されている。ジョン・サイモンとガース・ハドソンを迎えてツアーを締めくくりたいという佐野の希望はかなえられた。とてもいいコンサートだった。ツアーは終わっても、話は尽きない。
●THE HOBO KING BAND
佐野元春: Vocal, Guitar, Harmonica
佐橋佳幸: Vocals, Guitars
KYON: Vocals, Guitars, Keyboards, Accordion, Mandolin
井上富雄: Vocals, Bass
小田原 豊: Drums, Percussion
西本 明: Organ, Keyboards
●GUEST MUSICIANS
JOHN SIMON: Vocals, Tambourine, Keyboards
GARTH HUDSON: Accordion, Keyboards
●Recorded at フェスティバルホール(大阪) 1998.3.29
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