MEDICINE BOX 〜Quiet The Ground〜 / 坂本龍一

■ビデオ収録曲
1.Germimation
2.A Hearty Breakfast
3.Before The War
4.The Seed And The Sower
5.Last Regrets
6.The Fight
7.Dismissed! /Assembly
8.Beyond Reason
9.Merry Christmas Mr.Lawrence
10.Japan
11.Coda

■発売元・ミディ
■1994年発売
■収録時間32分
■定価3,900円
■種別・癒し系イメージ映像&音楽

◆「MEDICINE BOX 〜Quiet The Ground〜 / 坂本龍一」解説 〜

映像〜山口保幸、音楽〜坂本龍一「CODA」より。。。

　このビデオは映像作家である山口保幸と世界的音楽家・坂本龍一(元YMO)とのコラボレートによって作り出された作品であります。まさに天才と天才との芸術的融合と言えるのではないでしょうか。この作品を聴いて・・・いや見ていると心がとても落ち着いてくるように感じます。教授作曲の音楽も山口氏の自然界を激写した映像とピッタリとマッチしていて、表情豊かにその映像作品がうねっていますね。視覚と聴覚から脳へと入ったその素晴らしい超芸術作品により、意識はもう別の場所へ飛んで行くような感じがします。いや冗談じゃなくこれは本当ですよ!　全編を通して見ていると、感情の起伏が自分でも手に取るように分かります。時には涙が溢れ出しそうになるくらい感情を操ってくれますね。芸術って素晴らしいなぁと感慨深くもなります。。。

　ではここでビデオにインクルードされているインナーからの詳細をお届け致しましょう。

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『緑のメディスンボックス』
　緑という色は私を奇妙な気持ちにさせる。光の強い季節がおとずれると、世界は万緑となり、つたや草の葉がこの星をおいつくす。我々がすむ空気の底は、まるで藻のゆれる水底のごとき景色となる。およそすべての意匠は、この藪の中や、藻のゆれる水流や、それら緑の苑の中からたちあらわれたのだろう。夏の日の窓辺で緑の魔物とかした山をながめている時、あるいは、苔や藻、水茎が繁茂する水面を眺めている時、何かが呼んでいるのに気がつく。目を閉じても、めまいは消えず、緑の藻のような古代の、紀原の緑がゆらゆらとゆれているのだ。また、川辺に立っている時、黒い魚は、水底にあいた泉のきらきら光る砂の中に消えてしまう。どこへ行ったのか、どこへ抜けるのか。古代人、インディアンらのような、地球のネイティブたちは、水が地底のどこを通り、そしてどこに出現するかに精通していたことだろう。そう、声にしたがっていけばよいのだ。そうすればすべてを忘れることができる。ここから消えることができる。
　この星は、緑の魔物であり、緑の魔術がある。太陽は赤いのに、なぜこの星は緑色をしているのだろう?
　緑の起源。
　草葉の陰や、緑陰や、緑の髪。おそるべきおしえは全て藪の中にある。
　水を吹き出す泉の脇には、小さな地衣類、苔や藻が生え、森羅万象が生まれる。世界が緑であることの不思議があり、想像力の起源はそこにある。
　だから、遊走する精子のようにただ緑の揺らぎのひだの中に誘われて入っていけばよいのだ。
　水茎、水精、水霊、水鏡。記憶や言葉や自分をなくしてしまうエクスタティック。
　終わりのない流れに身を任せていこう。カオス、ランダムネス、そちらの方へ。
　緑の魔術を学習すること。自然をよく見ると、そこから何かが出てくる。水たまりは一つの官能であり、泉はトランスポーター、鏡である。遠地。彼岸の窓、水面はすべての遠くのものがうつるモニターとなる。水の上を走ってゆく響、木の蔭、水滴、ゆらめき、光。抽象は自然の中にあり、人気のないところで世界は裸になっている。
　緑の浄土、緑の冥土をよく見ることだ、そこに秘密がある。
　滝。岩にあたりくだける飛法。
　滝壺に落ちつづける白い水の面はエクトプラズマのようだ。そこには御神体の秘密もある。浄化していけば森羅万象すべてが鏡となるのだ。映像は、起源の緑へ回帰していく旗である。歴史も言葉も、人の歴史を忘れ混沌へと身を沈ませてゆくと、大きな快楽がやってくる。
　画中の人。気がつくと私は黒い魚になっている。滝という境や、泉の穴があるということが、この星の秘密なのだ。
　さて、ここはどこだろう。とても懐かしく、そしてこわい場所に私はいる。
　このビデオは、坂本龍一の「コーダ」をベースとして映像作家である山口保幸君がつくり上げたアンビエント・ビデオである。しかし、このビデオの最初に「メディスン・ボックス」ていうコトバが登場するように、これは従来よくある環境ビデオとはちょっとちがった、より深い意識にもとづいてつくられている。「メディスン・ボックス」というコトバは勘のいい読者ならすぐわかるようにインディアンの「メディスン」から派生したコトバである。メディスンとは大雑把に言うと、この宇宙にある力をその力にさからうことなくコントロールする魔術であり、善くも悪くも使うことができる。インディアンたちは、大地に送電線がはられTVがあらわれた時、どういうわけか、そのTVを「メディスン・ボックス」と呼んだ。TVは使い方しだいでは、両刀の刀となるおそるべき魔力の箱であると思ったのであろう。
　誕生以来、TVは、人々にさまざまな欲望を喚起してきたのだが、それがここに来て、逆に人々を沈静させるクワイエットなメディアとして、とらえられはじめているということが私には非常に面白い。この山口君の「クワイエット・ザ・グランド」は、そんな「善きメディスン・ボックス」の注目すべき作品なのだ。ネイティブ・インディアンの中でもとびきり風狂メディソン・マンだったレイム・ディアは「やがて、すべての人が電気を消す日がくるだろう」と予言したが、それはあながち荒唐無稽なことではないと思う。何かマイナスの技術というものを人々は発見しようとしているからだ。山口君がそのうち本当に「緑」しかうつっていない映像をつくってしまうような気すらしている。

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　どうでしょうか?　イメージが湧いたでしょうか?　でも実際にこのビデオ作品を見ると、その頭で思ったイメージが遙か宇宙の彼方まで飛ぶくらい凄いと実感できますよ。都会の分刻みで動く生活に疲れた方々、その心をぜひこのビデオで癒してください。。。