◆「glass castle /
ラクリマ・クリスティ」解説
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ラクリマ・インディーズ時代の透明感溢れる素敵なビデオクリップ集です。聴けば見れば、心が限りなく透明になっていくような感覚になります。。。 では以下ビデオにインクルードされているインナーより解説をお届けいたしましょう!
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ここではない何処か・・・それは、いつも
La'cryma Christi
のライブを観ていて思うこと。曲が作りだす情景と、歓声が広げる世界は、まだ誰も見たことのない幻を浮かび上がらせる。
そんな彼らが、このビデオ「Glass
Castle」を作る為に訪れた国、それがイタリア。いまさら説明不要だとは思うが、彼らのバンド名はイタリア語で
"キリストの涙"。日本からミラノ経由で14時間、ローマに着いたのは2月5日の夜。その夜、レストランで
"La'cryma Christi"
という名のワインを手にした彼らは、とても嬉しそうだった。
初めてのイタリアで、その場所の空気を感じながら行われた撮影場所は、ベネチアとローマ。水の都市ベネチアは、ちょうどカーニヴァル中だったこともあり、街は世界中の観光客で賑わう。そんな街中を歩くと、どこからともなく現れる仮面をつけた中世の貴族達に出会う。きらびやかな衣装に身をつつみ、フッと霧の中に消えていく姿は、とても幻想的。迷路のような狭い道が入り組み、小さな橋の下にはゆっくりと運河が流れる。ゴンドラが水面を揺らし・・・街全体が時の流れを止めているような感触すら覚える。
このベネチアで撮影されたのは、ゴンドラに乗ったシーンと、仮面をつけたモデルのシーン。あえて人通りの少ない場所を選んでの撮影だったので、映像からはカーニバルの騒がしい雰囲気は伝わってこないが、広場でのスチール撮影時のギャラリーの多さはハンパではなかった。5人ひとりひとりが、イタリアにいることを実感しながら、順調に進んだ撮影だったが、3日間のベネチアでの撮影のうち、天気が良かったのは1日だけ。残りの2日間は、冬のベネチア名物の霧に包まれ、何もかもが真っ白。この霧の中での撮影は、ステージの上で彼らが見せる幻が、一瞬現実のものになったような・・・そんな瞬間を見せていく。それぞれの個性はベネチアの景色の中に溶け、とても不思議な空間を生み出していった。
細かいエピソードをあげればきりがないが、言葉の通じない国で、動じることなく、どんどんイタリア語を覚えていく彼らの姿は、頼もしい限り。また言葉が通じなくても、地元の人達の陽気さはお国柄?
笑顔で通じてしまうところは、さすがイタリア。そうそう、このベネチアでのエピソードをひとつ。ゴンドラの撮影が終わったTAKAは、誰に聴かせるともなく運河のそばで歌い始める。そのしなやかな歌声は大きく響き、通りすがりの人は足を止め、聴き入る人達の数は徐々に増えていく。そして、歌い終わると同時に周りから起こったのは拍手と歓声だった。
歴史の重みを見せつける建物と彫刻の数々。崩れかけた石の柱、朽ちていく壁は何も語らず、そのままの姿で、もうどの位そこに存在しているのだろう?
古代遺跡の中に街が存在するローマ。石造りの建物が多いせいか、街全体のトーンは統一され、華やいだ雰囲気よりも重さを感じさせる街。
ローマでの撮影は、市内からバスで約1時間移動した場所にある遺跡をバックにしたものと、街
中、教会、倉庫での撮影。誰もが思い描くような、古代ローマの遺跡そのままの場所で撮影を行った彼ら。そんな彼らをとても透明な空気が包んでいく。ずっとずっと昔に、ここに住んでいた人々がいて、今、ここに存在している彼ら。きっと彼らは時空を超えた何かを感じたんじゃないだろうか?
国と気が合うというのは変な話だが、イタリアという国が彼らを呼んでいた、そんな気さえした撮影だった。この後、場所を移動して、大きな柱の周りでの撮影は、イタリアでの初の演奏シーン。久しぶりに楽器を持ったという彼らは、撮影前のウォーミングアップに余念がない。そろそろ日が暮れるという頃、遺跡をバックに
SHUSE、KOJI は楽しそうに弦を弾き、スティックを持つ LEVIN
の表情からも笑顔がこぼれる。HIRO
は休憩時にもずっと弾き続けていた位だから、よっぽどギターを弾きたかったに違いない。どんどん寒くなっていく中、大空に向かって広がっていくサウンドは、静かに呼吸する遺跡と共鳴していくように響いていった。演奏シーンは翌日の教会の中、倉庫でも撮影されたが、最終日となったこの日、なんとなく元気のない彼ら。あまりに早く過ぎていった日々・・・明日、日本に戻らなくてはならない、帰りたくない気持ちがフトした瞬間に笑顔を曇らせる。素敵なスタッフに恵まれ、それだけ居心地の良い国になってしまったイタリア・・・お疲れさま!
と、スタッフ全員と最後の食事をした後、彼らは
"再び、この地を訪れることができますように"
と願って、トレビの泉にコインを投げ入れた。
石だだみの道を歩き続けると、どこからか響いてくる教会の鐘の音。神の存在がとても身近に感じる国、イタリア。そこでの10日間の滞在は、この国の持つ大きな歴史の中では、砂粒にも満たない時間かもしれない。でも、その砂粒のような時間の中にしっかりと足跡を残した彼ら。ローマでタイトルが決定した『
Glass Castle
』・・・このビデオで、今まで幻だったものの断片が、現実のものになる。そして、その現実の映像の奥には、また幻が存在する。きっと彼らの見せる、ここではない何処か・・・見たことのない情景は、このビデオを作ったことで、より色濃いものになるに違いない。
ガラスの城の扉を開ける。広間を通り抜け、回廊を歩き、螺旋階段を上がる。重なりあう光に目を閉じて、耳を澄ませば、きっと彼らの歌声が聞こえてくる。貴方の記憶の中に、世界にひとつしかないメロディを刻むように。
●La'cryma Christi are:
TAKA/ Vocal
HIRO/ Guitars, Vocal
KOJI/ Guitars
SHUSE/ Bass, Vocal
LEVIN/ Drums
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