◆「DEBUT 〜SHARISHARISM Vol. 1 /
米米クラブ」解説 〜
〜ビデオにインクルードされているインナーより〜
お饅頭、売ったんだって!?
ライブ会場で。まったく。とんでもないグループの登場です。米米CLUB。といっても、まだほとんどの人がその名を耳にしたことがないかもしれません。去年の10月にアルバム「シャリシャリズム」でデビューしたばかりの新人グループ。TBSラジオ「きみといつまでも」や文化放送「米米グラフィティ」といった番組でバカをやってる謎の軍団といえば、ああ、あいつらか、と顔をしかめるリスナーも少なくないことでしょう。
簡単にプロフィールをたどっておきます。まだデビュー間もないため公式資料が手元に届いておらず、詳しくはわからないのですが、どうやらデビューは3年ちょっと前。1982年の11月、慶応大学三田祭でのこと。当時はプチン小野田
& 米米CLUB
と名乗っていたようです。その後、目黒の鹿鳴館や原宿クロコダイルなどで定期的にライブ活動を展開。'84年に入ってからは一夜で150人以上の動員を記録するなど、注目を集め始めました。やがて'85年、レコード会社13社の争奪戦を経て、CBS・ソニーと契約。同年10月に前述のデビュー盤をリリースしました。今年1月下旬に東名版で初のホール・ツアー
"シャリシャリズム"
を敢行。このビデオに収められたのはその東京公演の模様です。途中、ボーカルのひとりが叫ぶ「ステージか広い!」という言葉が切実に響きます。このツアーでかれらは、ノベルティ・グッズとして、なんとバンドのイメージ・キャラクターでもある
"Wドリブル"
を型どったお饅頭を売ったのだとか。突飛なアイデア・・・と思いきや、メンバーのひとりの実家が和菓子屋さん。実はそれだけのことだったんです。なんて安易なバンドでしょう。
もちろん、問題点はたくさんあります。まるでホスト・クラブのナンバー2のような風貌のほうのボーカルは、顔と声はいいけれど汗っかき。ライブの間じゅう、しゃべっているか歌っているか。少しは黙ってもらいたいものです。もうひとりのどぎついメイクのボーカルも、パワーと図太さは文句ないのに、あれではまるでブーツィ・コリンズ。バックにぶらさがった
"JO" の文字は、偉大なるソウル・ブラザー、"JB"
ことジェームス・ブラウンのもじりでしょうか。フトドキです。ベースの男の髪型も間抜け。椅子に座ったギター
&
キーボードの男の足が下についてませんし、ドラマーのイヤリングも不気味です。そして、何よりもこの人を食ったグループ名・・・。
けれども、この勢い。バカな勢い。ワケのわからない勢い。こいつは
"買い"
です。山本リンダの往年のヒット曲さえ、何のてらいもなく平気でカバーしてしまえる間口の広さも笑えます。強烈なヘビー・メタル・ファンク「美熱少年」をはじめ、「ジンギスカン」やら「ソウル・ドラキュラ」やらのフレーズまで飛び出すファンキーR
& B
「かっちょいい」、ストレートなポップ・チューン「チャイルド・ハート」、水っぽい歌謡ロック「アイ・キャン・ビー」などなど。雑多な音楽スタイルを全て呑み込んで、力まかせに噛み砕き、腕ずくで消化してしまう、なんでもありの姿勢も悪くありません。強靱な胃袋には大いに期待できましょう。それに女の子。これが素敵。3人組ダンシング・チームがかわいいし。あと、もうひとりのギタリストも、女の子のくせしてなかなかやるし。パーカッションやホーン・セッションの活躍も見逃せません。
近々、アメリカの雑誌「インタビュー」の取材を受けることになっているという米米CLUB。彼らが日本の誇りとなるか、あるいは日本の赤っ恥となるか。今後の活躍に期待したいところです。
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