◆「ジャパン・ツアー /
ザ・バンド」解説 〜
●ビデオインナーより
1983年9月2日 新宿厚生年金会館にて収録
RICK DANKO,(g.vocal)
LEVON HELM,(ds.vo.ma)
RICHARD MANUEL,(vo.key)
GARTH HUDSON,(key)
ERNIE CATE,(key)
RON EOFF,(bass)
EARL CATE,(read g)
TERRY CAGLE,(ds)
'76年11月25日、ボブ・ディランやリンゴ・スター、エリック・クラプトンを始め、そうそうたる顔ぶれを迎えて開催された"ラスト・ワルツ"をエピローグに、その10余年に及ぶ栄光の軌跡に終止符を打った、不世出のアメリカン・ヒーロー、ザ・バンド。その後、若干のソロ活動は見受けられたとはいえ、このところ、しばしの沈黙を強いられたオリジナル・メンバーの内、リヴォン・ヘルム、リック・ダンコ、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソンの4人は、'83年夏、縁あって再びひとつに合体、ここにめでたくザ・バンドの名は復活するに至った。そして、ロビー・ロバートソンの不参加という大きなハンデを背負いつつも、ケイト・ブラザースらによる力強いサポートに支えられ、夢にまで見た伝説の四士は、そろって日本の土を踏むことになったのである。
さて、この8月から9月にかけて、東京、大阪、名古屋、札幌の4大都市で実現したザ・バンド初の来日公演は、いずれも'70年のスマッシュ・ヒット「Rag
Mama Rag」
を皮切りにスタート。以下、「Up On Cripple Creek」、「The
Shape I'm In」、「King Harvest(Has Surely Come)」、「Stage
Fright」と、皮肉にもロビーのペンによる一連の代表作が、リック個人のレパートリー「Java
Blues」を交え、矢継ぎ早に披露されていく。とりわけ、そのリックの熱唱に湧いた「It
Makes No
Difference」、ガースのアグレッシヴなシンセサイザーを大々的にフィーチャーした「Chest
Fever」、さらには、ありにも著名な'68年の記念すべきデビュー・ヒット「The
Weight」あたりが擁す強烈この上ないインパクトが、多くの人々に限りない感銘を与えた事実は、改めて記すまでもなかろう。
また、彼らがこれまで、ザ・バンド、あるいは個人名儀により吹き込んだ、いくつかのカヴァー作品からも選曲がなされ、エルヴィス・プレスリーが一躍世に知らしめた、「Mystery
Train」や「Milk Cow Boogie」、ボブ・ディランの「I Shall Be
Released」、チャック・ウィルスの「(I Don't Want To)Hang Up
My Rock And Roll Shoes」、ジョニー・オーティスの「Willie And
The Hand
Jive」等は堂々当夜のハイライトへと君臨。加えて、チャック・ベリーの「Back
To
Memphis」、ケニー・ロギンスも取り上げたシンディ・ウォーカー&エディ・アーノルド共作による「You
Don't Know Me」、そして、「Voodoo
Music」、「Caldonia」、「Blaze Of
Glory」へと続く、貴重な本邦初公開カヴァー作品も、まさにリヴォンの趣向に見合った、ハイ・センスなセレクションとして、しっくりザ・バンドのカラーになじみ、2時間余りくり広げられた彼らの心のこもったステージは、'76年のスマッシュ・ヒット「Ophelia」によって、静かに終焉の時を迎える。
この先、リヴォン、リック、リチャード、ガースの4人が、再びザ・バンドの名のもとに集結することはなかろう。この実直なライヴ・パフォーマンスが、彼らと共に生きた永遠のあかしとして、長きに亘って親しまれ続けることを心より期待する。
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