◆「ディケイド /
デュラン・デュラン」解説 〜
●ビデオインナーより
3月のある日、ロンドンにあるデュラン・デュラン・プロダクションから、彼らの最新ニュースが自宅に届けられた。ファックスという便利なものが世の中に普及されて、日本とイギリスの距離をあまり感じなくなってはいるが、アーティストの情報が、オン・タイムで入手するのは、そう簡単な事ではない。しかし、嬉しいもので、デュラン・デュラン・プロダクションは、いつも好意的に、情報を伝えてくれる。
ファックスの内容は、デュラン・デュランの最新アルバムに関してだった。「5ヶ月間に及んでロンドンでのレコーディングが終わり、現在はホリデイを取っている。アルバム・タイトル、アルバム・ジャケットのデザイン、フォト・セッション、ヴィデオ制作などは、休み明けに行い、7,8月にはリリースするつもり。今回のプロデューサーは、ローリング・ストーンズを手掛けたことで知られているクリス・キムジー。全曲オリジナルである。」きっと、このヴィデオがリリースされる頃には、もっと詳しい情報が入っていると思う。新しいサウンドを、もう耳にしている人がいるかもしれない。
が、ここで考えてみたい。一体、デュラン・デュランは、クリス・キムジーを使って、どんな音をクリエイトしたのだろうか。この情報だけで想像するならば、エレクトリックな音を、うまくそぎ落としたシンプルなロック・サウンドになっているのではないかと思う。ロンドンのオリンピック・スタジアムで、5ヶ月間、彼らが何を思い、アルバム作りを進めていったのかは、あともう少しで分かるわけだ。前作「ビッグ・シング」は1年かけて完成させた。デュラン・デュランは、レコーディングにかなり時間をかけるバンドだが、今回はかなり早いペースだ。彼らのアイディアは、早いうちに、はっきりした方向性を見つけたのだろうか。想像はつきない。
他に、オフィスから送られてきたニュースによると、これまでは正式なメンバーではなかったギターのウォーレン・ククルロとドラムスのスターリン・キャンベルが、正式にデュラン・デュランのメンバーとなり、再び、デュラン・デュランは5人編成のバンドとしてスタートすることになつたとのこと。この決定はきっとかなり前からメンバーの頭の中にあったようだが、これまでのデュラン・デュランのイメージを、最初から、いきなり脱ぎ捨ててしまっては、あまりにも不自然と彼らは感じていたと思う。今なら、自然に2人をメンバーとして迎える準備が、ファンの中にも出来上がっているし、自然の移り変わりとして、誰もが好意的に受け止めてくれることを、メンバーは分かっているのだと思う。
デュラン・デュランは89年、デッケードの締めくくりと、バンドを新しく出発させるために、ベストCDとベスト・ヴィデオをリリースした。90年に発表されるアルバムが、新しいデュラン・デュランのものとなるためにも、ここでひとつのメモリーを宝箱に収めなければならなかった。過去を葬るのではなく、過去を栄光のものとするため、そして、新しいデュラン・デュランの時代を輝かしいものにするために、リリースしたのだろう。この二つの贈り物は、ファンにとっても、きっと大事な宝物になるはずだ。
ベストCDとヴィデオは、1981年のレコード・デヴューから、89年にリリースされた"オル・シー・ウォンツ・イズ"まで、まさに10年間の彼らの歩みと、成長とが、1本にまとめられている。CDのほうは、昨年発売された。ヴィデオは、MTV時代を彩り、彼らの成功に一役かったものだけに、クオリティの素晴らしさだけでなく、ヴィデオに対する彼らのひたむきさやアイディアが、今見てもおもしろい。ミュージック・ヴィデオの枠を越えたおもしろさがあるのだ。
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